栃木信用金庫 桜通り支店

DATA

竣工: 2006年
所在:宇都宮市桜2丁目
用途:銀行の支店
構造:鉄骨造 2階建て
延床面積:494.34 ㎡
受賞:第19回(平成19年度)栃木県マロニエ建築・景観奨励賞
:第11回(平成19年度)宇都宮市まちなみ景観賞

設計にあたり

 宇都宮市街地内の2支店の統合店としての計画です。"桜通り"として広く親しまれている通り沿いに建つ金融施設として、違和感無く地域にとけ込む建築環境づくりが課題となりました。

"桜通り"の歴史的背景

1.第14師団の軍道
 明治40年に「第14師団」が宇都宮に駐屯し、司令部をはじめ各施設が当地に配置されました。それにより軍人や多くの関係者が、またはその師団を対象とした多くの商人が移り住み今日の宇都宮市発展の礎となりました。計画地の前面道路は、当時師団の諸施設を結ぶ重要な軍道(2㎞の10間道路)として整備され同時に「日本の心」を象徴すべく沿道に桜(ソメイヨシノ)が植樹されました。

2. 市民に親しまれた桜並木
 大正中期頃には、見事に成長した桜並木では各種イベントが行われたり、お花見で賑わう市民の憩いの場として、その後も「軍道の桜並木」「桜通り」として長きに渡り親しまれてきました。そして、昭和38年道路拡張と老朽化に伴い桜並木は伐採され姿を消すこととなりました。(現在は当時の碑だけが残っている)

 "桜通り"は上記のような歴史的背景を持ち宇都宮市民にとって大変重要で懐かしい通りとして位置づけられて今日に至っています。しかし、その桜並木も今は見る影も無く時代と共に忘れ去れようとしているのが現状です。また、古くから宇都宮を代表する建築材料としての「大谷石」の持つ素朴さや親しみやすさを活かした宇都宮ならではの景観づくりの推進など、地産素材を大切にする心が育ってきています。

 そこで計画では、街に対して、既存のバス停を含めたポケットパークを設定し大谷石と桜(ソメイヨシノ)で装い、また建物においても大谷石を多用し、落着きと奥行感のある表情で、かつての街のイメージづくりに努めました。
 地域密着の金融機関を目指すにあたり「まちの記憶をあたためる」姿勢と景観づくりが地域にとけ込む第一歩として考え、更に今後街の新たな記憶を残すアメニティースポットとして育っていくことを期待しています。